"みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト"
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お知らせ

【開催報告】みんつくゼミナール2022第3回 「思い込みやズレを乗り越えて納得のいく意思決定をするためには?」を開催しました

10月16日、みんつくゼミナール2022第3回「思い込みやズレを乗り越えて納得のいく意思決定をするためには?」を開催しました。

ピーペックが主宰するみんなでつくろう、これからの医療プロジェクト<People’s Power flow into Healthcare : PPH>は、病気をもつ人、ライフサイエンス企業、医療者、研究者といった立場の異なる人たちが協働し、これからの医療についてディスカッションや公開イベントを通して一緒に考え、病気をもつ人視点の医療・サービスをみんなで創るプロジェクトです。病気をもつ人主体の治療・薬・サービスを「あたりまえ」にすることを目指して活動しています。

本プロジェクトでは、医療に関わる様々なステークホルダーの相互理解を目的に、「みんつくゼミナール2022」と題してセミナーを開催しています。
今回のゼミナールでは、病気をもつ人や医療従事者、ライフサイエンス企業、関心のある市民の方など90名近くの方にご参加いただきました。

「思い込みやズレを乗り越えて納得のいく意思決定をするためには?」

●「正確な情報」とは

大野先生から、まず治療が「効く」と客観的に言えるための科学的根拠について解説いただきました。
根拠としての正確性が最も高いものは、ランダム化比較試験と呼ばれます。

ランダム化比較試験等で行われた臨床試験の結果は、薬が効くか聞かないかの裏付けとしては非常に重要ですが、すべての結果は、全く効果がない(0%)、またはすべての人に効果がある(100%)の間に位置することになります。

情報というものはあくまで価値中立的なものであり、正確か不正確かを測ることはできるが、正しいか間違いかではないと先生のお考えを紹介いただきました。
正確な科学的根拠を手に入れた次の段階として、治療法を実施するかどうかという決断行動の意思決定があります。

●科学的根拠に基づいた医療

実際の診療の現場で行われている、科学的根拠に基づいた医療はエビデンス・ベースト・メディスン(Evidence Based Medicine:EBM)と呼ばれています。

これは科学的根拠に示された通りに医療行為や意思決定を行うマニュアル医療と誤解されがちですが、実際は、科学的根拠を判断材料にしつつ、患者さんの病状や社会背景、医療者の専門性、患者の好みや価値観等を統合し、意思決定を行うと定義づけられています。

実際にEBMを実践するための5stepsも、夫婦喧嘩という身近な例を用いて大変分かりやすくご紹介いただきました(ぜひ動画の解説をご覧ください)。
また、EBMを構成する要素で、最も影響が大きいのが患者の価値観、好みの部分です。
同じ降水確率でも、傘を持っていく人ともっていかない人がいることから分かるように、同じ根拠を示されても、意思決定が人により全く異なる場合があります。

自分の目的に合致するような情報があるかどうか、それを批判的吟味も含めて収集を行い、自分の価値観と照らし合わせて、治療をするかどうかを決めるのが、科学的根拠に基づいた医療です。そのため、ときに科学的根拠が示す結果と異なる判断をすることも、その判断が時と場合により変わることもあります。

●意思決定の落とし穴

なぜ病気になってしまったのか、自分が選んだ治療法が本当にベストだったのか、何が不安か分からないがとにかく不安で夜も眠れないなど、患者を襲う後悔・不安・葛藤があります。

医療の世界では、還元主義(複雑な物事でも、それを構成する要素に分解し、個別に要素を理解できれば元の複雑な事象も理解できる)をもとに進歩してきましたが、患者の悩みを理解する場合、そうした還元主義的考え方では目の前の患者の悩みとギャップが生じる可能性があります。

●ギャップを埋めるための解決策

解決策として、患者力アップのコツを2つ紹介いただきました。

①悩んだり、不安だったりしたときには、勇気を出して主治医に相談(メモに整理、数を絞って主治医に渡す)
②悩みや不安を相談するための信頼できる窓口を複数確保

人は、物事を選択するときに大きなストレスを感じます。だからといって、言われた通りにするということは、意思決定を放棄してしまうことになります。
患者として必要なのは、「声をあげる」こと。自分で決めた選択は、失敗はあっても後悔はないはずです。
これが納得のいく意思決定につながるのではないかとお話しいただきました。
病気をもつ方のみならず、医療者、企業の方それぞれの場面における「意思決定」について、総合的に解説いただきました。

また、質疑応答では、意思決定における情報源・相談先として、セカンドオピニオンやソーシャルワーカーの利用についても紹介されました。
その他にも、患者として意思決定する際に知っておきたい情報を沢山共有いただきましたので、詳細はぜひアーカイブ動画をご視聴ください。

さまざまな立場から考える「納得のいく意思決定」について

ディスカッションでは、認定NPO法人 希望の会 轟浩美氏がモデレーターを務め、大野先生、PPHプロジェクトに参画する様々なバックグラウンドをもつメンバーで「さまざまな立場から考える『納得のいく意思決定』について議論しました。

病気との生活は選択、意思決定の連続だという意見、また、自分が当事者になった際に情報がどこにあるか分からなかったという経験談が共有されました。
また、単に正確な情報では「救われない」という意見、インフォデミックの中で、不確実性を伴った情報はインターネット上で拡散されにくい(絶対治る!といった情報の方が拡散されやすい)といった意見も出されました。

当事者でありながら創薬に携わるメンバーや大野先生からは、研究は熱い想いからスタートし、データの客観性は事実ベースに、それを元にしたディスカッションは、熱い想いをもちつつも第三者的目線で批判的にデータを見ることの必要性が提示されました。

また、製薬企業としての情報発信についても議論され、正確性だけでなく、欲しい情報にたどり着ける、気持ちに寄り添った患者視点の発信についても議論されました。

こうした情報発信や意思決定の支援を行っていく中で、本プロジェクトも同様、感情のままのぶつけ合いではなく、心理的安全性の高い場を作り、対話をしていくことの重要性が確認されました。

アーカイブ動画
開催概要

■開催日時:10月16日(日)13:00~15:00
■開催方法:Zoomウェビナー
■参加費:無料
■プログラム
<講演>:大野 智氏(島根大学医学部附属病院臨床研究センター教授)
<ディスカッション>:参加者の意見も積極的に取り上げながら、プロジェクトメンバーが、それぞれの立場から「納得のいく意思決定」について意見を交わします。

■主催:一般社団法人ピーペック みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト
■共催:グリーンルーペ、認定NPO法人希望の会、NPO法人患者中心の医療を共に考え共に実践する協議会(JPPaC)
■協賛:アステラス製薬株式会社、第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、ノバルティス ファーマ株式会社、ファイザー株式会社

今後みんつくゼミナールは今後12月、1月に開催予定です。詳細はウェブサイト等でご案内いたします。ご登壇・ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

今後の開催予定

第4回 12月18日(日)
みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト ルールブックチーム制作
「病気をもつ人とライフサイエンス企業の協働ガイドブック」を知ろう

第5回 2023年2月5日(日)
ペイシェントジャーニーから考える「あの時、必要だったこと」(仮)
(全5回のまとめ)
講師:天野慎介氏
(一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン 理事長/一般社団法人全国がん患者団体連合会 理事長)


<形式> オンライン(アーカイブ動画配信あり)
<参加費> 無料
<対象> 病気をおもちの方、ご家族、患者会(患者支援団体)の方、ライフサイエンス企業の方、医療者、研究者、興味のある市民


※ピーペックでは、「患者」という言葉を用いず、「病気をもつ人」と表記していますが、本記事では、講演の内容に基づき、「患者」と表記しています。