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お知らせ

【開催報告】みんつくゼミナール2022第5回  ペイシェントジャーニーから考える 「あの時、必要だったこと」 を開催しました

2023年2月5日、みんつくゼミナール2022第5回 ペイシェントジャーニーから考える 「あの時、必要だったこと」 を開催しました。

ピーペックが主宰するみんなでつくろう、これからの医療プロジェクト<People’s Power flow into Healthcare : PPH>は、病気をもつ人、ライフサイエンス企業、医療者、研究者といった立場の異なる人たちが協働し、これからの医療についてディスカッションや公開イベントを通して一緒に考え、病気をもつ人視点の医療・サービスをみんなで創るプロジェクトです。病気をもつ人主体の治療・薬・サービスを「あたりまえ」にすることを目指して活動しています。

本プロジェクトでは、医療に関わる様々なステークホルダーの相互理解を目的に、「みんつくゼミナール2022」と題してセミナーを開催しました。
全5回の最終回となる今回のゼミナールでは、病気をもつ人や医療従事者、ライフサイエンス企業、関心のある市民の方など70名を超える方にご参加いただきました。

ペイシェントジャーニーから考える「あの時必要だったこと」

がん対策基本法成立から、全国がん患者団体連合会設立に至るまで

天野氏による講演では、自身の経験から、がん対策基本法、その後の全国がん患者団体連合会設立に至るまでのジャーニーをご紹介いただきました。
地域や病院間によるドラッグラグ解消のための活動が、がん対策基本法という形で結実しますが、その背景にあったのはがんの当事者の経験、声でした。

がん対策基本法では、がん対策推進協議会が組織され、そこには当事者や遺族、家族が入ることが法律で明記されています。
天野氏はその委員としても活動し、天野氏が現理事長を務める全国がん患者団体連合会は、その後の改正がん対策基本法の成立にも大きな役割を果たします。

連合会を組織する患者会は、がんの種別や地域など様々な団体から構成されています。多様なニーズがある中でも、共通している課題や問題に対して提言を行っています。

国民的な議論が必要になる健康保険やAYA世代のニーズ

改正がん対策基本法で、声が届きづらい希少がんや難治がんに対する要望を行い、がん医療実用化研究として国の支援を得ることになりましたが、薬価が非常に高額になるケースもあるといいます。
こういった薬をどうやって国民皆保険で維持することができるかは国民的な議論が必要になりますが、保険適応には後ろ向きな国民の意見も少なくないと感じたエピソードもご紹介いただきました。

こうした医療経済学的な議論をする際は、気を付けなければ命のランク付けにつながりかねません。
〇歳以上のがん患者には高額な医薬品を投与すべきでないと一律に年齢で区切ることはできませんが、一方で、リソースの問題があることも事実です。
すべての課題をクリアすることは難しいですが、当事者団体として、命にかかわる疾患に関しては保険でカバーすべきだと現状のお考えを教えていただきました。

また、若年発症のがん当事者(AYA世代)のニーズについて、生き方や将来、恋愛のことなどが相談したかったこと/情報が欲しかったこととのアンメットニーズが多いことが明らかになっています。
命に係わる選択を、精神、社会的な苦痛を感じながら意思決定している現状があり、その支援をしていくことが求められます。

患者市民参画(PPI)のあり方

患者の「ために」ではなく、患者市民と「ともに」作り上げる英国のPPIの定義を引用しご紹介いただきました。
いろいろな参画の仕方で「共に創り上げる」こととして、Kiseki trialの医師主導治験など、「応援する」関わりを事例を挙げて解説いただきました。

医療提供側や研究者が患者の意見をそのまま受け入れるのではなく、健全で創造的な形で、「ともに」医学研究や医療をつくることが、これからの日本のPPIにおいて重要です。先進事例を参考にしながらも考えていくべき形です。

天野氏×宿野部武志 対談

続く宿野部武志との対談では、天野氏が活動を始めた当時の思いや、自身のキャリアについてお話いただきました。
活動を始めた当初、多くの同世代の方が、わずか数年の差で新薬の恩恵にあずかれずにこの世を去ってしまったこと、その理不尽さに直面してきたことをお話いただきました。
残された自分の人生を送る上で、亡くなった方が望むことや、医療に対して、もっとこうなったらいいのにと思うことなどが力になったといいます。

患者会活動に関しても、資本金100万ドル(日本円で約100億円)でも「小規模」と自称するアメリカでの患者会の例も紹介いただきました。ボランティアベースで行われている日本の患者会活動ですが、当事者主体の姿勢はそのまま尊重しつつも、もっと経済的にも、キャリアとしても持続可能な活動になっていく必要性を強調していただきました。

当事者性の在り方についても議論が交わされました。当事者になってみないとわからないことは存在しますが、立場の異なる人が当事者の気持ちを分かろうとしてくれる気持ちを尊重することの重要性も確認されました。

ディスカッション 「あの時、必要だったこと、これから、必要なこと」

ディスカッションでは、認定NPO法人 希望の会 轟浩美氏がモデレーターを務め、天野氏、宿野部武志に加え、がん当事者の就労問題に取り組んできた前田留里氏、難病分野で活動をしてきた池崎(ピーペック事務局)の様々なバックグラウンドをもつ5名で「あの時必要だったこと、これから、必要なこと」について議論しました。

まず最初に、高額医薬品や国民皆保険の制度の在り方など、国民的議論や国民の合意が必要な課題に対し、どのように合意を形成していくのか、また様々なニーズを抱えた多様な患者会の連合会として発言する際、重視していることについて天野氏よりお話いただきました。

続いて、幼少期からの療養生活を経て、透析の導入に至ったときの宿野部武志の思いやレジリエンス(心の回復力)に重要だったポイントについて意見が交わされ、前田氏と池崎の活動分野である就労支援における患者市民参画についてや、PPIの活動で挑戦したいことについても議論が交わされました。
がんや難病、腎疾患領域など活動のバックグラウンドは異なるものの、これから患者市民参画にかかわる人を増やしていくことが重要だという意見で一致しました。この部分はぜひアーカイブ動画も併せてご覧ください。

みんつくゼミナール2022は今回で終了となりますが、今後もPPHプロジェクトでは、患者だけでなく、一般の市民も含め、患者市民参画にかかわる方を増やせるように取り組みを進めていきます。

アーカイブ動画
開催概要

第 5 回 ペイシェントジャーニーから考える「あの時、必要だったこと」

開催日時:2月5日(日)13:00~15:00
開催方法:Zoom ウェビナー
参加費:無料
主催:一般社団法人ピーペック みんなでつくろう、これからの医療プロジェクト
共催:グリーンルーペ、認定 NPO 法人希望の会、
NPO 法人患者中心の医療を共に考え共に実践する協議会(JPPaC)
協賛: アステラス製薬株式会社、第一三共株式会社、武田薬品工業株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社、EA ファーマ株式会社、ノバルティス ファーマ株式会社、ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社

プログラム
講演:天野慎介氏
一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン 理事長、一般社団法人全国がん患者団体連合会 理事長

ディスカッション:病気をもつ立場から、「これから、必要なこと」について意見を交わします。
天野慎介氏
前田 留里氏 特定非営利活動法人京都ワーキング・サバイバー理事長、一般社団法人全国がん患者団体連合会 理事、がん対策推進協議会委員
宿野部武志氏 一般社団法人ピーペック 代表理事、本プロジェクトリーダー
池崎 悠氏 一般社団法人ピーペック 事務局、難病 NET.RDing 福岡 代表
モデレーター 轟浩美氏 認定NPO法人希望の会 理事長